『バブルの物語』簡単解説
『バブルの物語』は、「過去3世紀にわたる歴史を振り返りながら、バブルが形成される過程と群衆心理について分析した本」です。
著者のジョン・K・ガルブレイスは20世紀を代表する米国の著名な経済学者。『ゆたかな社会』や『不確実性の時代』など、数々の名書を残しています。
歴史を振り返ると、17世紀初頭のチューリップバブル(オランダ)や20世紀初頭に起きたブラック・マンデー(アメリカ)など、社会はバブル(価格の急騰→暴落)によって何度も狂乱を繰り返してきました。また、近年では、インターネットバブルの崩壊や仮想通貨の大暴落なども記憶に新しいですね。
社会の狂乱を生むバブルは一体どのようにして形成されるのでしょうか。
「投資を始めようと思っている方」、「バブルの歴史を知りたい方」におすすめの本です。
”バブル”はどのように形成されるのか
バブルはなぜ起こるの?
筆者はバブルが形成される過程を次のように解説しています。
「一見新奇な商品や仕組みの登場」
→「金融に感度の高い人々を捉える」
→「価格が上がる」
→「新しい買い手を惹きつける」
→「価格はさらに上がる」
→「一般の人々まで参加し始める」
→「価格はより一層上がる」
→ ……
「買い手の増大⇄価格の上昇」が正のループに入り、指数関数的に価格がつり上がっていくことでバブルは形成されます。
具体例として、近年注目の的となった『ビットコイン(仮想通貨)』について見てみましょう。
ビットコインとは、2008年に発明された、インターネット上で通貨のように取引が可能なシステムの一つです。
初めは金融の専門家やIT関係の人々の間だけで注目されていましたが、徐々に投資家の間でも投機対象として人気が広がり、2016年頃から価格は大きく上昇し始めます。
すると、「どうやらビットコインに投資すると儲かるらしい」との噂が広がり、一般の人々も殺到するようになったため、価格はさらに急上昇。2017年12月に当時の最高値を記録し、たった1年間で価格は「約24倍」にもなりました。
価格が上昇している間はほぼすべての人が含み益の状態なため、社会はお祭り騒ぎのような状態になります。
価格は参入者が増え続けている限り上昇しますが、人間は無限に存在しないので、どこかで必ず限界がやってきます。価格が下落に転じると、我先に逃げ出そうと一斉に売り注文が殺到。最高値から1年後には「約1/6」まで暴落しました。
”バブル”に沸く人々の心理
「”バブル”に沸く人々には2つのタイプが存在する」とガルブレイスは述べています。
第一のタイプは、何らか新しい価格上昇の状況が根づいたと信じるようになり、市値は下がることなしなしに際限なく上昇を続けるであろうと期待する。つまり、市値は新しい状況—収益および価値が引き続き大幅に増大するような新局面—に適応しつつあるのだと考える。
『バブルの物語』(ダイヤモンド社)19ページ
バブルに沸く人の第一タイプは、「社会は大きな転換点を迎えており、投資対象の価格は右肩上がりに上昇し続けるだろう」と信じる人々です。ビットコインの例で言えば、
ピットコインは社会構造を一変させるほど革新的な仕組みらしい!未来の通貨とも言われているから、これから価値は上がり続けるだろう!今のうちに買っておかなければ!
このような感じで飛びついた人々が分類されます。
そして、少数ながら異なるタイプの人々も存在すると言います。
第二のタイプは、第一のタイプの人よりも、表面上はもっと保守的で、またおおむね少数である。彼らはその時の投機のムードを察知する。あるいは察知したつもりになる。そして上昇気運に便乗する。自分は格別の才を持っているがゆえに、投機が終わる前に手を引くことができる、と確信している。価格上昇が続いている限りは最大限の利益が得られるだろう、来るべき反落の前に手を引けばよい、と考えるのである。
『バブルの物語』(ダイヤモンド社)19ページ
バブルに沸く第二のタイプは、「市場の盛り上がりをバブル状態と認識しつつ、このバブルに便乗すれば自分は資産を増やすことができる」と信じる人々です。ビットコインの例で言えば、
今、仮想通貨ブームが来ている!このブームはいつかきっと終わるが、今買って最高値で売り抜けば、大儲けできるぞ!
このように思ってビットコインを買った人達が分類されます。
ビットコインが盛り上がった2017年当時、私は大学生でした。毎日のように討論番組等で著名人が「仮想通貨が社会に与える影響」を議論し、大々的な広告宣伝が打たれていたのを覚えています。
「今買わないと、自分だけ取り残されてしまうかも…。」こう感じた方はきっと多かったはずです。
さいごに
バブルの渦中、多くの人々は「投資対象の価格が上昇しているのはそれほど革新的なためであり、社会が転換点を迎えているからだ!」と信じて疑いません。
しかし、実際のところは、「そのように信じて多くの人々が参入している事象」それ自体が、価格上昇要因である場合がほとんどなのです。そして、それはいつか必ず弾ける運命にあります。
歴史を振り返ると、金融を専門とする大学教授や企業幹部ですら、バブルをバブルと見抜けずに発言を続け、一般市民を巻き込んでバブル形成に寄与していた事実が多く残っています。
楽観的な社会の雰囲気に飲みこまれて損しないためにも、バブルの歴史を教訓として知っておくのが良いですね。
以上、『バブルの物語』を紹介しました。
「投資を始めようと思っている方」、「バブルの歴史を知りたい方」はぜひ一度読んでみて下さい。
コメント