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【感想&解説】『ザ・フォーミュラ』を読んで【科学が解き明かす”成功法則”】

目次

『ザ・フォーミュラ』簡単解説

『ザ・フォーミュラ』は、「科学的な研究に基づいて成功法則を導く試みがなされた本」です。

著者のアルバート=ラズロ・バラバシは米国の有名大学に所属する理論物理学者です。

本書では「成功の法則」という一見ありきたりなテーマに対し、膨大なデータ解析に基づいて、科学的な視点で解明が試みられます。自己啓発系や成功者の自伝とは一線を画すビジネス書と言えるかもしれません。

「ビジネスなどで成功したい」、「科学から導かれる成功法則について知りたい」方におすすめの本です。

「成功」とはなにか?

「成功」とは一体なんでしょうか。

例えば、「お金をたくさん稼ぐこと」が成功だと思うビジネスマンも人もいますし、「知名度が高いこと」を成功だと思う芸能人もいるでしょう。「革新的な発明をすること」が成功だと思う研究者だっています。

人それぞれの「成功」を眺めていると、ある一つの共通点が浮かび上がってきます。それは、私たちは成功を「個人的」ではなく「集団的」な概念として捉えている、という事実です。

著者は本書の中で、「成功」を次のように定義しています。

「成功とは、あなたが属する社会から受け取る報酬である」。

『ザ・フォーミュラ』(光文社)18ページ

お金を稼ぐにも、知名度を上げるにも、相手が居て初めて成立することです。発明の革新性についても、発明者本人が決められることではなく、同分野の研究者仲間や社会が評価を決めています。

私がこの「成功の定義」を見てすぐ思い出したのは、”百獣の王”として芸能界で活躍されている武井壮さんのエピソードです。

武井壮さんは、子供の頃から「自分の強みは運動神経である」と認識し、日々練習に励んで20代の頃に陸上の十種競技で日本チャンピオンとなります。しかし、圧倒的なパフォーマンスを持って日本一になったにも関わらず、「当時、陸上では1円も稼げなかった」と述べています(Youtube「武井壮オトナの育て方」より)。

「圧倒的な才能と実績を有していながら1円も稼げなかった」武井壮さんは、その後、芸能人の方たちと交流を深めていくなかで、成功するために大切なことはパフォーマンスそのものではなく「それを求める人の”数”」だということに気が付いていくのです。

このエピソードからも、「成功かどうかは社会がどう評価するかで決まる」ことがよく分かりますね。

あなたが成功するために重要なのは、あなたとあなたのパフォーマンスではない。

重要なのは社会であり、社会があなたのパフォーマンスをどう捉えるかである。

『ザ・フォーミュラ』(光文社)32ページ

「成功」と「生産性」の密接な関係

世の中では実に様々な「成功するための条件」が語られています。

「”才能”が最も大事だ」という意見もいれば、「”努力”が一番重要だ」という意見もいます。「”創造性”の豊かさだ」と思う人もいれば、「成功するかどうかは”運”次第だ」と思う人もいるでしょう。

もちろん、「成功」は多くの要因が組み合わさって起こるとは思いますが、それでもやっぱり、成功するのに一番な要素は何なのか、気になってしまうものです。

筆者らはこの問いに答えるため、何万人もの研究者を対象にして、最も引用回数の多い(=社会から評価の高い)論文を発表したタイミングと、その時の研究者の年齢・経歴などとの関係を厳密に調べました。すると、ある法則が浮かび上がってきたのです。

引用回数の多い論文が発表されたのは、研究者が研究生活に入って最初の二〇年以内という比較的早い時期だったのだ。

『ザ・フォーミュラ』(光文社)264ページ

「重要な仕事は若い頃に集中する」。

考えてみると、アインシュタインが相対性理論を発表したのは26歳の時ですし、ビル・ゲイツがMicrosoftを設立したのは19歳の時と非常に若い時期です。

成功するためのに最も重要な要素は”若さ”なのでしょうか。年老いてしまえば、創造性が衰えて、成功する見込みが無くなってしまうことを表しているのでしょうか。

実は、この研究には続きがあります。

確かに、画期的な論文を発表する可能性は二〇年後にはがくんと落ちる。だが、ここで重要なのは、生産性もまたがくんと落ち込んでいたことである。

『ザ・フォーミュラ』(光文社)266ページ

一般的に研究者は年齢を重ねていくと、研究室運営や大学の授業などで忙しくなり、研究に充てる時間が少なくなって論文を発表するペースが遅くなっていきます。若くして名を上げた研究者なら尚更です。会社の研究者であっても、年齢が上がると管理職になって社内政治に奔走するようになったり、子供の世話で研究する時間が無くなる人が大半でしょう。

若い時期に引用回数の多い画期的な論文が集中していたのは、なにも本人の創造性がピークに達していて論文のクオリティが高かったわけではなく、論文を数多く発表していた時期に”一山当てる”確率が上がっていただけなのです。

重要なのは、「不屈の精神」だった

凡人が成功するのはムリなんじゃないか…。

もう若くない自分は用無しなんじゃないか…。

若くして成功する天才たちの経歴を見ていると、このように思えてくるかもしれません。しかし、この本で明らかにされた成功法則によれば、重要なのは「生産性」であり、「不屈の精神」があればいつまでも成功する可能性は変わらないのです。

パブロ・ピカソは「ゲルニカ」などの作品で有名な芸術家ですが、その生涯で10万点以上の作品を制作し、作品点数でギネス記録に登録されている多作家だったことはあまり知られていません。発明家のエジソンは白熱電球などの発明で有名ですが、実はその生涯の中で2千件以上もの様々な特許権を取得しています。

世間で”天才”と評される人々は、日の当たらない場所でものすごい労力と時間をかけては新しいものを次々と生み出し、「打席数を稼いでいた」ことを忘れてはなりません。

「打席に立つ回数を増やすこと」が成功のカギを握っている、と言えるかもしれませんね。

以上、本記事では『ザ・フォーミュラ』を紹介しました。

本書では科学的研究に基づいて成功法則を導き出す試みがなされており、他のビジネス本とは一線を画す内容となっています。

本記事で紹介した内容は本書のごく一部ですので、興味を持った方はぜひ一度手に取って、「成功法則」の全容に触れてみて下さい。

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