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【感想&解説】『自分の中に毒を持て』を読んで【芸術家・岡本太郎の人生論】

『自分の中に毒を持て』を久しぶりに読み返し、その圧倒的なパワーに元気を貰いました。

目次

『自分の中に毒を持て』簡単解説

『自分の中に毒を持て』は、「社会の”常識”を捨て、生きがいある人生を送るためのメッセージが込められた作品」です。

著者の岡本太郎は日本を代表する芸術家であり、大阪万博の際に制作した『太陽の塔』などが有名です。「芸術は爆発だ」など、数々の名言も残しました。

力強い文章で著者のエネルギーに触れることができ、誰が読んでも勇気と希望をもらえる本だと思います。

「生きがい」のある人生

会社で昇格して給料もたくさん貰えるようになったけど、なんだか満たされない…。

結婚して子供もできて、思い描いていた人生を送れているはずなんだけど、なんか物足りないなぁ…。

人生で一度はこのような感情を抱いたことがあるかもしれません。

経済発展によって日本はとても豊かになりましたが、一方で、自分の人生に対する「違和感」を感じる人も多くなりました。

この得体の知れない「違和感」の原因は一体何なのでしょうか。解消法はあるのでしょうか。

岡本太郎は、人生における大事なキーワードとして”生命感”を挙げています。

確かに交通は便利になり、生活は保証されている。しかし物質的な繁栄とか、「幸福」などというもので人間がみたされるはずはないのだ。人間が生まれてきて、一番痛切につかみとらなければならない“生命感”というものが、そのために逆に遠ざかり、見失われてしまう。

『自分の中に毒を持て』(青春文庫)195ページ

現代では多くの人が「周りから期待された人生」を生きています。

できるだけ良い大学に進学し、新卒で会社に入社する。会社では設定された目標のために、毎日慌ただしく働く。老後に備えましょうと言われて、資産形成を始める。定年退職したら、ちょっとした海外旅行にでも行きたいな…。

現代人は与えられた目の前のTo Doリストを盲目的に消化していくばかりで、ふと気が付くと、「あれ、なんでこんなに頑張ってるんだっけ!?」と迷子になってしまっているのではないでしょうか。

「周りから期待された人生を送ること」を私たちは「しあわせ」と呼んでいます。しかし、「しあわせ」は必ずしも「生きがい」とイコールにはならないようです。

幸福というのは、自分に辛いことや心配なことが何もなくて、ぬくぬくと、安全な状態をいうんだ。

(中略)危険なこと、辛いこと、つまり死と対面し対決するとき、人間は燃えあがる。それは生きがいであり、そのときにわきおこるのがしあわせでなくて”歓喜”なんだ。

『自分の中に毒を持て』(青春文庫)73ページ

こんな選択をしたら周りから笑われるかもしれない…。給料ががくんと下がって生活が苦しくなるかもしれない…。協力が得られないかもしれない…。

もし本当にそんな状況に陥ったら、それは「不幸」と言えるかもしれません。しかし、自分の内側からふつふつと湧き上がってくるものを隠さずに表現することは「生きがい」となり、人生に対してよろこびを感じることができる、と言っています。

わび・さびのような「質素・静寂」が当時の美的感覚だった日本の芸術界において、岡本太郎は赤・青・黄色などの原色を使って表現する自分のスタイルを貫き通しました。

「最初はもちろんひどい評価を受けた」と語っていますが、己のスタイルで表現し続けるうちに徐々に名声は高まり、大阪万博の『太陽の塔』など大仕事も任されるようになります。

本気で自己表現を続ければ必ず誰かの琴線に触れ、社会の風当たりが変わることを示した例ですね。

外に向かって発言する時はそれをごまかして、なにごともないようににこにこしているが、もっと正直になって、恐れずに自分の内面を直視してもいいじゃないか。必ず心のどこかに満たされていないものがあるはずだ。それとマトモに向き合うことはなかなかスリルのある、しあわせなんかよりも、もっとキリッとした面白さだと思う。

『自分の中に毒を持て』(青春文庫)75ページ

岡本太郎の文章は非常に”エネルギッシュ”です。本書を読むと、スタミナ丼を食べたように元気が湧いてきました。

なんかここ最近気分が落ち込んでいる人、将来に対して漠然として不安を感じている人は間違いなく刺さる本だと思います。

ぜひ一度、本書のエネルギーに触れてみて下さい。

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