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【感想&解説】『土と生命の46億年史』を読んで

『土と生命の46億年史』読了。

身近な『土』が、実は”奇跡の産物”であることに気づかせてくれる本でした。

目次

『土と生命の46億年史』簡単解説

『土と生命の46億年史』は、「土が一体どのような過程で形成され今日の形に至ったたのか、自然の神秘を壮大なスケールで紐解いていく本」です。

著者の藤井一至さんは土壌学・生態学を専門とする研究者です。世界各地の土壌を求めて飛び回る傍ら、土の神秘を伝えるべく、精力的に執筆活動もされています。

本書では、「岩石の星」だった原始の地球から「フカフカの土」が形成された驚くべき過程が解説され、普段は気にも留めない自然の神秘に気づかされます。

「土が形成された歴史に興味がある」「土の機能・役割について知りたい」という方にオススメの本です。

『土』は何者なのか?

月や火星などはゴツゴツした岩石や砂に覆われている一方で、地球には惑星で唯一、フカフカの『土』が存在しています。

一体、土はどこから来たのでしょうか? そもそも、土は何者なのでしょうか?

『土』は、砂や粘土、そして、腐植(植物遺体や死菌体)の混合物である。

これが本書で語られている、土の正体です。

私たちが想像する『土』は、「枯れ草と砂が混ざったもの」といったイメージではないでしょうか。しかし、土を詳細に分析してみると、枯れ草由来の成分と同じくらいの割合で、死菌体由来の成分がたくさん含まれているそうです。

私たちが普段何気なく踏んでいる土が、実は微生物死骸の塊だったと考えると、かなり驚きですね。

『土』はどうやって生まれたのか?

地球が誕生した46億年前は、月や火星の表面と同じように岩石や砂で覆われていました。

地表の岩石は、雨や風で徐々に削り取られ、微粒子へと徐々に「風化」していきます。風化してできた微粒子の中には、スメクタイトと呼ばれる「-の電気を帯びた微粒子(=粘土)」が存在していました。この「-の電気を帯びた…」がポイントで、後の”生命誕生”に重要な役割を果たします。

-の電気を帯びた微粒子の周辺には、+の電気を帯びた化合物「アンモニウムイオン(NH4+)」などが吸い寄せられていきます。

そしてある日、-の電気を帯びた微粒子と、その周辺に吸い寄せられていたアンモニウムイオン(NH4+)の蓄積物に、カミナリが直撃しました。

一瞬で1000℃の高温状態になったアンモニウムイオン(NH4+)を含む蓄積物は、さらにその周辺に存在していたとされるメタン(CH4)などと反応することで、生命の構成要素である「アミノ酸」が初めて誕生した、と言われています。

また、アミノ酸も同じく電気を帯びています。生成したアミノ酸は同じく-を帯びた微粒子(=粘土)に吸い寄せられて蓄積し、それらが反応し結合することで、生命を構成するアミノ酸配列(=遺伝子)が生まれたという仮説(粘土鋳型説が提唱されているそうです。

このような”奇跡”が積み重なることで生命が誕生し、そして、生命の遺体たる『土』が誕生したんですね。

キープレイヤーは「粘土」

-の電気を帯びた微粒子(=粘土)は生命誕生に貢献したことを見てきましたが、現在においても、粘土は重要な役割を果たしています。

粘土は砂と違い、「電気を帯びている」ことが特徴です。電気を帯びていることで、養分(アンモニアのような有機化合物)はもちろんのこと、水分も大量に吸着・保持することができす。この粘土の性質によって、植物が育ちやすい土壌環境が提供されているのです。

実は、日本は世界的に見ても”粘土に恵まれた国”だそうです。日本は火山大国であり、噴火によって大量の粘土鉱物が定期的に供給され、豊かな土壌環境が維持されているのです。

外国人に評判の高い「日本食」は、日本が火山大国であることにルーツがあると言っても過言ではありません。火山は恐ろしい存在だと思っていましたが、豊かな土壌環境を提供してくれていることを知ると、視野が広がりますね。

さいごに

本記事では、『土と生命の46億年史』について紹介しました。

粘土から生命が生まれ、生命の遺体の蓄積によって土が形成されているんだ…。

奇跡の積み重ねによって今日の私たちが存在していることを知り、自然の神秘に心が躍る作品でした。

あまりに身近すぎて普段は気にしない「土」に実は深いストーリーがあることを教えてくれる一冊です。皆さんもぜひ一読してみて下さい。

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