『NEXUS 情報の人類史』読了。来たるAI時代の全容が垣間見える、全人類必読の本でした。
『NEXUS 情報の人類史』簡単解説
『NEXUS 情報の人類史』は、「情報の本質を紐解き、AIによって社会が一変する未来を描いた壮大な作品」です。
本書は次のような流れで展開されます。
- 情報の本質は「動機を生んで行動させる」ことにある。
- AI時代は、つながりを生んで行動させる指示者が人類以外(コンピュータ)になる、「歴史上初の時代」となる。
- AI時代において最も重要なものは「データ」であり、データを独占した国や企業が覇権を握る。
人類の歴史を古くから遡ることで、AIがいかに”異質”な存在かを理解することができます。また、AI時代にどのように振る舞うべきかの指針が得られます。
「AIが社会に与える影響を知りたい」、「AI時代の波に乗りたい」という方にオススメの一冊です。
「情報」の本質とは?

人類の歴史は「情報」の歴史といっても過言ではありません。
中世の時代はキリスト教、仏教などの「宗教」が私たちの生活に深く入り込んでおり、「聖典」という「情報」に基づいて行動指針を決定していました。
産業革命時代にはコピー機やテレビ、ラジオが普及し、大勢の人に同じ情報を素早く普及させることが可能となりました。政治的な宣伝活動により「全体主義」が台頭し、ナチス・ドイツの誕生や世界大戦の勃発にも繋がりました。
ここで、「情報」の本質について考えてみます。普通私たちは、「情報」=「真実を表すもの」と考えます。
しかし、よく考えてみると、「科学的でない」ことには薄々気づいていながらも宗教の教えに従って行動する信者は多く存在します。「根拠がない」と知っていながらも占いの結果に基づいて行動する人が存在します。
つまり「情報」の本質は、「現実・真実を表すもの」ではなく、「動機を生んで行動させるもの」と言う事ができます。
情報の決定的な特徴は、物事を表示することではなく結びつけることであり、別個の点どうしをつないでネットワークにするものなら、何でも情報となる。
『NEXUS 情報の人類史』(河出書房新社)47ページ
「AI」の革新さ

情報の本質を整理した上で、近年、技術開発が加速している「AI」について考えてみます。
「AI」は「人工知能」とも呼ばれます。文字通り、AIはデータを処理して自分で考える「頭脳」を持ち、答えを導いて私たちに提供してくれます。
情報の歴史を振り返ってみると、例えば聖典の原稿は「人間が考えて書いたもの」でした。テレビ・ラジオも放送されるコンテンツは「人間が考えて作成したもの」でした。
しかし、AI時代になると状況は一変します。AI時代では、コンピューターが自ら考え出した情報に基づいて人間が行動する、誰も経験したことのない時代に突入するのです。
(中略)
AIは自ら情報を分析するのに求められる知能を持っており、したがって意思決定で人間に取って代わることができる。
AIはツールではない。行為主体なのだ。
『NEXUS 情報の人類史』(河出書房新社)21ページ
現時点においても、UberやタクシーGoなどの「配車アプリ」は既にAIで運用されており、運転手はAIの指示通りに客の元へ出向き、ナビに従って運転する仕事を行っています。
昔の運転手と言えば”土地勘”を頼りに働く知的労働の側面もありましたが、今ではただ車を運転する”肉体労働”の色合いが強くなっています。
AIは真っ先に「ホワイトカラー(知的労働者)」の仕事を奪っていき、人類の多くはコンピューターの指示通りに働く「ブルーカラー(肉体労働者)」の仕事に従事する…。そんな未来が待っていることでしょう。
(中略)二〇二五年に仕事が欲しい人は、知能だけでなく運動技能と社会的技能にも同じくらい投資するべきかもしれないことを示唆している。
『NEXUS 情報の人類史』(河出書房新社)168ページ
「データ植民地化」する日本

AI時代の全容が垣間見えたところで、AIが社会・政治に与える影響について考えてみます。
産業革命の時代に覇権を握っていたイギリスは、アジア・アフリカの植民地から原材料(鉄鉱石、石炭、綿花など)を安く仕入れる代わりに、最先端の織物機械等で衣料品などを大量に輸出し、高度な鉄道システムや軍事力で支配的な地位を築きました。
AI時代において原材料に値するのは「データ」です。私たちがサービスを利用することで大量のデータが蓄積され、AIはそれらを解析して自己強化し、より優れたサービスを生み出します。
GoogleやYoutube、Amazon、Instagram、X(Twitter)、Tiktokなど海外企業のサービスを使う度に、データは海を越えて海外に転送され、AIが学習・強化され、圧倒的なサービスを生み出していきます。
日本では「デジタル赤字」が叫ばれますが、それは単に「お金」が海外に流れるだけでなく、「データ」が海外に垂れ流しになっていることも表します。「データ」の重要性に気づかなければ、いつまで経っても搾取される側から抜け出すことはできません。
さいごに
本記事では『NEXUS 情報の人類史』について解説してきました。
情報の本質を紐解いていくと、AIが歴史的にどれほど「革新的」な存在であるか分かります。私たちは、人類以外が知能を持つ史上初の時代に突入しつつあり、歴史の大きな分岐点を目撃しているとも言えますね。
これまでの経験や常識が通用しない「新しいゲーム」が始まっていると思えば、こんな刺激的な時代に生まれたこと自体が貴重だと思えるかもしれません。
時代の変化を”チャンス”と捉えて波に乗るのか、それとも、波に飲まれるのか…。AI時代の行方について興味を持った方はぜひ一読してみて下さい。