インフレ、戦争が相次ぎ、安全資産として「貴金属」への注目が集まっています。
安全資産としての貴金属
2025年6月22日の本日、次のようなニュースが飛び込んできました。
米国、イラン核施設3カ所を攻撃 イラン「重大な国際法違反」(日本経済新聞)
「米国がイランに爆撃機を飛ばし、地下施設を攻撃できるバンカーバスターを使って核施設を攻撃した」とのことです。
世界情勢がさらに混乱を極める中、米国の信認は低下。世界各国が基軸通貨としての「ドル」を捨て、代替資産として金のような「貴金属」の重要性が今後ますます上昇していくと考えられます。
実際に、各国の中央銀行は金の保有量を増やしています。
「金が世界の外貨準備の2位に」 ECBが報告、ユーロは3位に後退(日本経済新聞)
金・銀・プラチナの採掘コスト
貴金属の投資先として代表的なものは、金・銀・プラチナの3つが挙げられます。
投資判断をする際には、これら貴金属が一体どれくらいの採掘コスト(AISC:All In Sustaining Costs)なのか、そもそもの原価を知っておくべきです。
※平均採掘コストはあくまで”平均値”であり、金採掘業者や金鉱山の種類によって、平均値よりもコストが低かったり高かったりします。
「金」
まずは、金の平均採掘コストを確認してみましょう。

2024年の平均採掘コストは約1500ドル/ozでした。一方、平均価格は約2400ドル/ozでした。
直近数年間を見ると、平均採掘コストに対しておよそ「約1.5倍のプレミアム」を乗せた価格で販売されています。
金に投資する際は、この「1.5倍」が一つの割安・割高の判断基準となりそうです。
「銀」
続いて、銀の平均採掘コストを確認してみましょう。

直近2024年の平均採掘コストは約15ドル/ozでした。一方、年平均価格は約28ドル/ozでした。
直近数年間を見ると、平均採掘コストに対しておよそ「約2倍のプレミアム」を乗せた価格で販売されています(以外にも、金より高いプレミアムですね)。
金に投資する際は、この「2倍」が一つの割安・割高の判断基準となりそうです。
「白金族(プラチナ含む)」
続いて、白金族(プラチナなど)の平均採掘コストを確認してみましょう。
※プラチナ採掘会社の最大手であるAnglo American社(現在は分社化しValterra Platinum社)のデータを抜粋します。

プラチナは基本的に単独では産出されず、プラチナ、パラジウム、ロジウムが混ざった白金族バスケットとして産出されます。
直近2024年の平均採掘コスト(白金族バスケット)は約1000ドル/ozでした。一方、白金族バスケット価格は約1500ドル/ozでした(うち、プラチナ単体では約1000ドル/oz)。
直近数年間を見ると、平均採掘コストに対しておよそ「約1.5倍のプレミアム」を乗せた価格で販売されています。
プラチナに投資する際は、この「1.5倍」が一つの割安・割高の判断基準となりそうです。
まとめ
以上、金、銀、白金族(プラチナ含む)の採掘コストを見てきました。
直近数年間は、いずれの貴金属も「採掘コストに対して1.5~2倍の販売価格」となっています。採掘業もビジネスであり、平常時はだいたい1.5~2倍程度のプレミアムが乗った価格設定で販売されていることが分かります。
貴金属価格は、金融危機やバブル崩壊など大きなマーケットイベントが発生すると、時として大きく値下がりすることがあります。

大きく値下がりして採掘コスト並みに価格が下がった時は貴金属投資のチャンスとも捉えることができ、今後の動向に注意していきたいですね。