≫ サイトマップ

【感想&解説】『土と内臓』を読んで【微生物がつくる世界】

目次

『土と内臓』簡単解説

『土と内臓』は、「人体内における微生物とヒトの驚くべき共生関係について明らかにする本」です。

筆者のデイビッド・モンゴメリー/アン・ビグレー夫妻は、家の庭でガーデニングに取り組むうちに、微生物が豊かな土壌環境の形成に大きな役割を担っていることに気づきます。

微生物と植物が助け合いながら生きている自然界の構図に着想を得て、微生物と人の驚くべき共生関係について迫っていきくのが本書です。

「微生物について興味がある」、「人体の働きについて知りたい」という方にオススメの本です。

人間と微生物は助け合って生きている

「微生物」と聞いて、皆さんはどんなイメージを持ちますか?

微生物って、病気を引き起こす悪者のイメージ…。

微生物って、なんか気持ち悪い生き物だよね…。

微生物に対してあまり良くないイメージを持っている方が多いかもしれませんが、実は、人間と微生物はお互いに助け合って生きている”共生者”の関係にあります。

例えば、私たち一人一人の腸内には、100兆匹(=1000000000000000匹)の微生物が住んでいると言われています。

腸内に生息する乳酸菌の一種(Wikipedia Commons

私たち人間は大量の微生物を腸内に住まわせ、食物の一部を餌として提供します。微生物は与えられた餌を食べ、その廃棄物の一部は、人間が栄養源として取り込みます。

人間は微生物に「住まい」と「食事」を提供し、微生物は人間に「食物の分解機能」を提供しているのです。

まさに、Win-Winの関係ですね。

腸内環境が健康のカギを握っている

腸内環境がバランスを崩してしまえば、微生物による食物の分解機能も滞り、栄養素の不足や偏りが生じてしまうことは明らかです。

腸内環境が荒れると、例えば、肥満やアレルギー、糖尿病など、様々な病気を発症してしまう可能性があるそうです。

私たちは、農家が畑に肥料を撒くように、口にする食物により一層の注意を払って、腸内環境を”育む”必要があります。

腸の働きを理解する

腸内環境を”育む”ためには、まず、腸の働きを理解しなくてはなりません。

私たちの口に入った食物は、「胃」に入って液状に溶解され、「小腸」で一部が栄養素として吸収されます。そして、吸収できなかったものは「大腸」へ運ばれ、発酵のプロセスを経て、さらに吸収されていきます。

  • 胃 :食物を液状に分解
  • 小腸:栄養素を吸収
  • 大腸:消化しにくいものを発酵・分解し、さらに栄養素を吸収

大事なポイントは、「小腸」と「大腸」では消化される物質が異なっている点です。

例えば、同じ”糖質”でも、「小腸」では主に「単純糖質」が微生物によって消化され、「大腸」では主に「複合糖質」が微生物に消化されます。

単純糖質

ジュース・お菓子(砂糖)、ビール・ワイン(お酒)などに多く含まれる。消化が早い。

複合糖質

ごはん(穀物)、パン(麦)などに多く含まれる。消化は遅い(消化しにくい)。

もし、日々の食事が「単純糖質」ばかりで構成されていたらどうなるでしょうか。

単純糖質を好む小腸の微生物たちが増える一方で、複合糖質を好む大腸の微生物たちは栄養不足となり、腸内バランスが崩れ、お腹を壊しやすくなったり免疫機能が低下したりするでしょう。

「食事のバランスが大事」と言われるのは、なにも人間の生命活動のためだけではなく、腸内に生息する微生物のためでもあるのです。

腸内に生息する微生物のバランスが崩れれば、それはそのまま、人間の健康状態に返ってくることになります。

さいごに

私たちは普段、自分の体の中に「微生物が住んでいる」ことを意識しませんが、人間と微生物は間違いなく協力しながら生きています。

もしこの事実を理解していたら、「必要な栄養素をサプリメントで摂取していればOK」なんて発想は出てこないのかもしれません。

体内の働きを「微生物との共存関係」という観点で見つめ直した本書は、私たちに新しい世界観を与えてくれる、学びの多い本でした。

興味を持った方は、ぜひ一度手に取って読んでみて下さい。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次