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【感想&解説】『生命とは何か』【物理学者が語る生命の本質】

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『生命とは何か』簡単解説

『生命とは何か』は、「物理学の視点から生命の本質に迫る古典的な名著」です。

著者のシュレディンガーは現代物理学を築いた著名な物理学者です。彼が築いた『量子力学』は、理系大学生なら誰でも必修科目として学習するほど、現代の科学の基礎となっています。

本書では、遺伝の仕組みや生命の構造を物理的な視点から読み解く新しい試みがなされていきます。

「生物や物理に興味がある方」にぜひ一読をおすすめしたい本です。

物質を構成する「原子」

「原子」という存在をご存じでしょうか。

お米、パン、机、スマホ、衣服、人間、空気…。世の中に存在するすべての物質は、「原子」という最小の構成要素から成っています。

ヘリウム原子のモデル(Wikimedia Commons

この得体の知れない、パチンコ玉のような球形の原子の大きさは、例えばヘリウム原子だと、1オングストローム程度(0.0000000001メートル)です。もちろん、目では確認できませんし、普通の顕微鏡で覗いても見ることはできません。

私たちの身体も、この小さな小さな「原子」の積み重ねでできています。

「原子」がいくつか集まって結合したものは、「分子」と呼ばれます。

例えば、水分子はH2Oと表現されますが、これはH原子(水素原子)2個とO原子(酸素原子)1個から成っていることに由来します。

水分子(H2O)のイメージ(Wikipedia commons

液体や気体を構成する分子は絶えず”振動”し動き回っていることが知られており、これを「ブラウン運動」と呼びます。

例として、ミルクとコーヒーを混ぜ合わせたカフェラテをイメージしてください。ミルクの入ったコップにコーヒーを注入した際、最初は二層に分離していたコーヒーとミルクが、時間と共に”勝手に”混ざりあっていく様子が観察されますよね。

カフェオレ

これは、絶えず動き回っている水分子がコーヒー成分とミルク成分の粒子を小突き回し、2成分がランダムに移動する結果、コーヒーとミルクが”勝手に”混ざっていくように見えるのです。

原子や分子は私たちの身体に比べて、なぜ、そんなに小さいのか?

ここまで説明した上で、筆者は次のような問いを読者に投げかけます。

「原子や分子は私たちの身体に比べて、なぜ、そんなに小さいのでしょうか」と。

かなり唐突な感じもしますが、言われてみれば、「確かになんでだろう?」と感じます。

例えば、私たち人間の身体がコーヒー成分(数百nm程度)と同じくらいに小さいとしましょう。すると、私たちは四方八方から分子の体当たりを受け、真っすぐに歩いていくことは不可能でしょう。寝ている間に遠い場所まで運ばれて、全く知らない土地で目が覚めることになるかもしれません。

寝て、起きて、食べて、歩いて、喋って、笑って、寝る。このような”人間的”な営みを規則正しく送るためには、原子や分子の”きまぐれ”に影響されない程度に身体が大きくなくてならない、というのがシュレディンガーが本書で提唱した生命の一つの姿なのです。

このようにして、われわれは次のような結論にたどりつきました。すなわち、生物、および生物が営む生物学的な意味合いをもつあらゆる過程はきわめて「多くの原子から成る」構造をもっていなければならない。そして、偶然的な「一原子による」出来事が過大な役割を演じないようにしなければならない、と。

『生命とは何か』

生命の姿を物理現象で捉える

「原子や分子は私たちの身体に比べて、なぜ、そんなに小さいのでしょうか」

そんな、普段考えもしないごく当たり前なことも、物理学的な観点でみれば、必然的な姿であることが明らかになっていきます。

本書では他にも、「遺伝の仕組み」や「近代医療」といったテーマが描かれており、物理学的な視点でみた筆者の新しい生命観に触れることができます。

「生物や物理に興味がある方」はワクワクする内容と思いますので、ぜひ一度読んでみて下さい。

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