≫ サイトマップ

【感想&解説】『反脆弱性』を読んで【サラリーマンこそ副業すべし】

『反脆弱性』(ナシーム・ニコラス・タレブ)について解説していきます。

目次

『反脆弱性』簡単解説

『反脆弱性』は、「不安定な世の中を賢く生き抜くための性質(=反脆はんもろさ)の重要性を解いた作品」です。

著者のナシーム・ニコラス・タレブは、文筆家・トレーダー・大学教授など多様な顔を持つ哲学者です。

2007年に出版した『ブラックスワン』の中で「近い将来に金融危機が発生する」と警告し、翌年の2008年にリーマン・ショックが実際に発生したことで一躍脚光を浴びました。

タレブは当時、トレーダーとして株価暴落が発生する可能性に賭けており、リーマン・ショックの間に莫大な利益を計上したことでも有名です。口だけでなく実務でも自身の思想を証明してみせた稀有な哲学者でもあります。

本記事では、『反脆弱性』の中でキーワードに挙げられている「バーベル戦略」について解説したいと思います。

予測不能の世界に振り回される人々

今、世界はコロナウイルスの蔓延で大混乱しています。

欧米諸国はロックダウンを繰り返し、グローバル社会を前提としていた観光産業や航空産業は経営難に陥ってしまいました。

今回のような経済の大混乱は、たまたま、単発的に発生したのでしょうか?。

実は、今回のような不測の事態は「定期的」に訪れていることが歴史を見ると分かります。

  • 1973年:オイル・ショック
  • 1987年:ブラックマンデー
  • 2007年:リーマン・ショック
  • 2020年:コロナウイルス流行

経済の大混乱は約10~20年の間隔で「定期的」に到来しているのも関わらず、企業や個人事業主はその度に、破産の窮地に立たされてきました。

企業や個人の運命は、不測の事態に振り回されるしかないのでしょうか。

著者は、予測不能の出来事においてこそ真の力を発揮するような性質のことを「反脆はんもろさ」(=もろさの対義語)として定義し、反脆くなるための方法として「バーベル戦略」を取り上げます。

不確実性に対する解決策は、たいていバーベルの形をしている。

『反脆弱性』(ダイヤモンド社)上巻 268ページ

「冒険心」と「ノイローゼ」を組み合わせる?

バーベルとは、「両端に重りをつけたトレーニング器具」のことです。

片方で極端なリスク回避を行い、もう片方で極端なリスク・テイクを行う戦略のことを、バーベルに見立てて「バーベル戦略」と名付けました。

例えば、資産形成を例にとりましょう。

例えば、資産の90%は現金や債券などの低リスク資産で保有しつつ、残りの10%をハイリスク・ハイリターン株式で保有する。これが「バーベル戦略」のイメージです。

一見、ごく普通の資産運用術のように見えます。しかし、多くの企業や投資家はこれができていために、毎回毎回、経済が混乱するたびに、破産に追い込まれていると言います。

世の中には、最高の出来事に備え、最悪の出来事にはおかまいなし、という人がたくさんいるのだ。数々の証拠が示しているように、私たちは小さな損は嫌がるのに、超巨大なブラック・スワン的リスクはあんまり気にしない。高確率の小さな損失には保険をかけるのに、低確率の大きな損失には保険をかけようとしない。まったくあべこべなのだ。

『反脆弱性』(ダイヤモンド社)上巻 272ページ

金融セミナーなどで紹介されるのは「こうすれば儲かる」であり、ビジネスの現場で議論されるのはいつも「どうすればより多くの利益が出せるか」です。

一方で、「どうすれば破産しないか」はセミナーで教えてくれません。

そうやって、破産しないことを当然のこととして”万が一”を想定せずに行動するため、知らぬ間に少しずつリスクが積み重なっていき、予測不能の出来事が起こった際に一気に崩壊するのです。

反脆さを実現する最初のステップは、アップサイドを増やすよりも、まずはダウンサイドを減らすことだ。

『反脆弱性』(ダイヤモンド社)上巻 266ページ

サラリーマンの「バーベル戦略」

この「バーベル戦略」が適用できるものは、なにも資産形成に限ったことではありません。

例えば、毎日決まった時間会社に出勤するだけで固定給がもらえるサラリーマンは、非常に安定的な職業と言えるでしょう。

正社員であれば不当に首を切られることもありませんし、来月から給料が半分になることもありません。

つまり、サラリーマンは空いた時間で成功するかどうか分からない(リスクの高い)副業をすることで、ダウンサイド(破産)の可能性を抑えつつ、無限のアップサイドが狙える職業なわけです。

ビジネスマン兼研究者というバーベル戦略は理想的だった。午後3時か4時になり、会社を出れば、翌日まで仕事のことは考えなくていい。自分がいちばん重要で面白いと思うものを、好きなだけ追求できるのだ。学者のころはまるで囚人のような気分だった。他人のいい加減で独善的な計画に付き合わざるをえないからだ。

『反脆弱性』(ダイヤモンド社)上巻 274ページ

「バーベル戦略」によって素晴らしい功績を残した偉人は数多くいます。

例えば、アルベルト・アインシュタインは特許庁で働きつつ『相対性理論』に関する論文を書き上げました。フランツ・カフカは保険会社に勤めながら、『変身』、『城』などの小説を遺しました。

作家や芸術家、音楽家、研究者として一人前になり、経済的な自立を得ることは決して簡単なことではありません。一方で、1年目から経済的自立を得つつ、空いた時間で自由に興味ある物に集中できるのは、サラリーマンの特権とも言えます。

さいごに

「片方で生活を安定させ、もう片方で伸びしろのある事に賭ける」という「バーベル戦略」は、何事にも応用できる考え方だと思います。

生活を維持するためにサラリーマン生活を続けるだけでは面白みがありませんし、一方で、夢を追うために何年も定職に就かないのでは、日銭を稼ぐために不本意な仕事を受けざるをえません。

資産形成についてもそうです。銀行に預金するだけではお金は増えませんが、一方で、財産の大部分をリスクの高い投資商品に回してしまった場合、一瞬で資産が消えてなくなる可能性があります。

重要なのは、「安定」と「リスク」をバランスよく配置し、環境がどう転んでも大丈夫な状況を形成することだと感じます。

筆者が提唱する「バーベル戦略」に興味を持った方は、ぜひ一度、本書を読んでみてはいかがでしょうか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次