『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』という本が、かなりぶっちゃけた本でした。
『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』 簡単解説
本書は、保険商品のセールスマンから見た「保険の現実」について赤裸々に語る本です。
著者の後田 亨さんは複数の企業で保険営業マンとして勤務した後、現在は独立し、保険を正しく理解してもらうための発信活動を行っています。
タイトルには「生命保険」とありますが、これ以外にも医療保険やがん保険、個人年金に至るまで、ほぼすべての保険商品について解説がなされています。
筆者は既に企業から独立している方なので、「営業トーク」ではなく「本音トーク」で語られている点が非常に良心的だと感じました。
保険とはなにか
そもそも、保険とは一体どういうものなのでしょうか。
保険とは、「将来起こるかもしれないリスクに備えて、多数の人間が協力して日頃から積み立てておく制度」です。
実際には、保険会社が仲介役となって保険商品を提供し、消費者はその商品に加入する形で積立が行われます。
保険の還元率
保険の還元率はどのくらいなの?
(保険の還元率=積立総額のうち、実際に有事の際の補填金として使われている額の割合)
筆者によると、保険の還元率はおよそ40~80%であるといいます。これがどのくらいかと言うと、「競馬」の還元率(75%)より悪く、「宝くじ」の還元率(45%)より良いという具合です。
保険の還元率はギャンブルの競馬より悪いというのは、けっこう衝撃的ですよね。
それじゃあ、保険会社に引き抜かれている残りのお金は、どこにいっているの?
消費者に還元されない残りのお金は、保険営業マンのお給料や広告宣伝費に使われています。
保険は将来への備えと言いますが、積立額の1/2~1/3は、手数料として保険会社に取られている事実をまず理解しなければなりません。
国の健康保険で十分?
保険会社で働く人は保険の還元率を知っているので、民間の保険には入りたがらないと言います。
では、民間の提供する保険はほんとうに必要ないのでしょうか?
筆者は、「基本的に多くの人は国の健康保険で足りているから、まずは健康保険の中身をしっかり理解しておくべき」と主張しています。
健康保険は、保険会社の人も認める「最強の医療保険」なんですよ。民間の「医療保険」には入りたがらないくらいですから。
『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』(青春出版社)41ページ
そこで、最強の保険と言われる「健康保険」の中身についておさらいしておきましょう。
- 治療費の自己負担は3割
- 高額療養費制度
- 傷病手当金制度
治療費の自己負担は3割
これは皆さん当たり前に知っている点ですね。
国の健康保険に加入している人は、病院などでかかる治療費の自己負担が3割で済んでいます。
高額療養費制度
高額療養費制度とは、 「高額の医療費を支払った際、自己負担限度額を超過した分が後から払い戻される仕組み」 です。
例えば、一般的な収入(336~600万円)の方は、1ヵ月間に支払った医療費のうち、8万100円+αを越えた額は負担しなくて済みます。
国の健康保険に加入している人は、この高額療養費制度を利用することができますよ。
傷病手当金制度
傷病手当金制度とは、「病気やケガで出勤できなくなった場合に給付金が支給される仕組み」です。
期間は欠勤4日目から最長1年半、支給額は給与の支払いがない日数×(休む前の給料÷30日×2/3)です(派遣社員やアルバイトは支給の対象者ですが、フリーランスは対象外であることに注意)。
「高額療養費制度」や「傷病手当金制度」の手厚さを考えると、民間の医療保険やがん保険などは必要性が低いのかもしれません。
民間の保険が必要な時っていつ?
保険とは、「もしもの事態が発生した時に自分では用意できない」から、多数の人間が協力して日頃から積み立てておく制度でした。
この保険の”存在意義”に立ち返ると、広告文句や営業トークに惑わされず、本当に保険が必要ななにか明確になります。
筆者は、加入してメリットがあると思われる民間の保険商品とその対象者について2例ほど紹介しています。
”子育て世代”の死亡保険(掛け捨て)
子育て中の家庭では、もしも家主が死亡した場合、収入が無くなって生活が立ち行かなくなる場合があります。
これは、「自分ではお金を用意できない」部類に入りますよね。
そのため、子育て中の間は、15~20年程度の期間限定で掛け捨て(保証がしっかりしている)の生命保険に加入することが推奨されています。
自動車保険
自動車でもしも人を轢いてしまったりすると、相手に大けがをさせたり、死亡させたりして多額の補償金が請求される場合があります。
自動車事故の補償金も「自分ではお金を用意できない」部類に入りますので、自動車保険への加入が推奨されます。
このように、「もしもの場合に破産するリスクを秘めているもの」には、積極的に加入を検討してもいいでしょう。
さいごに
今回は、『「保険のプロ」が生命保険に入らないもっともな理由』という本を紹介しました。
保険に「絶対入るべき!」とか「絶対入るな!」と決めつけるのではなく、どんな人にどんな保険が推奨されるのかをデータに基づいて解説していたのが非常に好印象でした。
保険はマイホームに続いて人生で2番目に大きな買い物とも言われます。
余計な出費を増やさないためにも、正しい保険の知識を学んで必要性を吟味していきましょう。
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